LAST PRESENT
もろはかのこ
 


「珍しいねえ、あんたがここにやってくるなんて」
 オリヴィエのいたずらっぽい声が、からかうようにジュリアスを迎える。
ここは夢の守護聖の館。ジュリアスは、前もって約束してあったオリヴィエのもとを訪れたところなのだ。
 執務を終えてそのまま馬車でこちらに向かったのか、守護聖の正装に身を包み、威厳を備えたジュリアスがそこにいた。

 オリヴィエは美しくゴージャスなものが好きだ。そしてジュリアスも基本的にそのような好みの持ち主である。
 だからオリヴィエはゴージャスなジュリアスを見ると、ついもっと飾り立ててみたいと思ってしまうのだが、ジュリアスのほうはこれ以上自らを飾り立てるのは好ましくないようだった。
 首座の守護聖として、美しく荘厳であることは重要だが、華美になりすぎるのはよくない。ジュリアスはあくまでそう考えていて、オリヴィエの服装が華美にすぎるのではないか、と釘を刺したりもする。
 他人に服装や趣味のことで口を出されるのが大嫌いなオリヴィエは、そんなことを言われるのが嫌なので、プライヴェートでジュリアスを館に呼んだりすることはほとんどなかったのだが。
 『ジュリアスがワタシの趣味を認めてくれさえしたら、結構気が合うと思うんだけどねえ』
オリヴィエはそんなことを考えつつ、来客用のソファに腰を降ろしている、金髪の筆頭守護聖を眺めた。

「で?ワタシに相談したいことって何?」
単刀直入に切り出すオリヴィエに頷いて、ジュリアスも口を開く。
「そなたも知っていようが、実はもうすぐオスカーの誕生日なのだ。そこで、常日頃誠意をもって尽くしてくれるあれのために、何か催し事を開いてやりたいと思う」
「ふーん。つまり早い話が、オスカーのバースディパーティを開きたいってことだよね?」
「その通りだ」
 楽しい話題のはずなのに、ジュリアスは真剣な面持ちでオリヴィエを見ている。その真意がつかめず、とりあえずオリヴィエは話を続けることにした。
「で?オスカーのバースディをやるからって、ワタシに何を相談したいわけ?」
「そなたに、誕生会の企画を任せたい」
「ナンだって〜!?」
素っ頓狂な声をあげたオリヴィエに、あくまで冷静な表情を崩さないジュリアスが先を続ける。
「実は最初は私が主催しようと思ったのだが、オスカーの好みは私とは違うのだ。それを常に、私に合わせているのを当然として私は過ごしている。しかし誕生会というのは、その日の主役が楽しめるものにするべきではないかと思ってな」
「あらま〜ジュリアス、あんたもいいこと言うねえ。それで、どうしてワタシのところに来る気になったのさ?」
 事態を飲み込んだオリヴィエが、ニヤニヤ笑いでジュリアスを見つめた。
「そなたが、一番よくオスカーの趣味を理解していると思ったのだ」
 てらいもなくまっすぐに応えるジュリアスを見て、やっぱり着飾らせてみたい、と思いながらオリヴィエは頷いた。
「よく知ってるよ。さすが首座の守護聖様ってことか」
 その言い方がひっかかったのか、ジュリアスは一瞬不快そうに眉をしかめた。
揶揄されるのは彼のプライドが許さない。そんな生真面目で堅いところが、オリヴィエはちょっと苦手だと思っていたのだが、反面そのように表情を露にするジュリアスは実に魅力的でもある。そのことに気づいて内心含み笑いをしながら、オリヴィエは精一杯真面目な顔で頷いた。
「オッケー。いいよ、引き受けようじゃないか。そのかわり、場所はこのワタシの館。あんたはワタシのやることに一切口を挟まないこと。それでどう?」
「よかろう」
 素直に頷くジュリアスを見て、面白くなりそうな今後の展開にワクワクするのを抑えきれないオリヴィエだった。