LAST PRESENT
 

 その日、オスカーはオリヴィエの館に呼ばれていた。
今日は彼の誕生日。一緒に過ごしたいと大勢の女性からラブコールをもらっていたが、聖地に来てからは恒例になっているように、今年もジュリアスの館で静かに過ごすことに決めていた。

 聖地に来て初めての誕生日のことは、強烈な印象と共に記憶に焼きついている。
 ジュリアスの館で、馬の出産に立ち会ったのだ。
 前日の夜、産気づいた母馬は、ジュリアスが大切に愛でている一頭だった。難産でなかなか産まれず、ジュリアスは大層心配して、何度も厩舎へ様子を見に行った。オスカーもその供をして、ずっと傍らに付き添っていたのだ。
 幼い頃から馬に慣れ親しんできたオスカーは、馬について非常に詳しい。ジュリアスの厩舎には、専門の世話係も獣医もいたが、オスカーは自らの経験をもとに、彼らに指示を与え、ついに無事な出産を迎えることができた。
 丁度、翌日は休日だったので、そのまま館に泊まり、ジュリアスの心からのもてなしを受けた。
「そなたの誕生日であったのに、申し訳ないことになってしまったな」
 聖地にきたばかりの自分の誕生日を、きちんと把握してくれていたジュリアスにオスカーは何を思ったのだったか。

「は〜いオスカー!ようこそ〜!」
 派手やかなドレスに身を包んだオリヴィエに迎えられて、オスカーはうっかり目を丸くした。
「なんだ、オリヴィエ、その格好は?とうとうあっちの世界へ行っちまったのか?」
「おだまり!失礼な男だね。でも、ま、今日はあんたが主役だから大目に見てあげる」
「おい、俺はこれからジュリアス様のところへ行く予定なんだ。用があるならさっさと言え」
「あら〜ん、ジュリアスならここにいるんだってば!さあ、入って入って!みんな〜、主役のお出ましだよ〜ん!!」
「なにっ?ジュリアス様がここにいるって、そりゃいったい…」

 事態を飲み込めないままに、オリヴィエに背中を押されて館の中へ足を踏み入れたオスカーは、目の前の光景に思わず息を呑んだ。
「なんだ…こりゃ」

「オスカー様!お誕生日おめでとうございます〜!!」
 突然クラッカーの音や爆竹の音が鳴り響き、賑やかな音楽が流れ出す。
そこにいるのは、華やかに着飾った大勢の女性たち。
室内のあちこちに置いてあるソファやカウチ、壁際の椅子など、それぞれ思い思いの場所に座ったり立ったりしながら、片手に飲み物を持ちオスカーに向かってグラスを捧げている。
「オリヴィエ!これはいったいどういうことなんだ!?」
襟首をひっつかんで詰め寄るオスカーの剣幕に、衣装を破らないでよと注意しながら、オリヴィエは説明を始める。
「ジュリアスがさ〜。あんたのバースディパーティの企画をワタシに任せるって言ったんだよ」
「何だって?ジュリアス様が…」
「んもう、いいかげんに手を放してよね!」

 まだ釈然としないオスカーのまわりに、女性たちが近寄ってきた。大きな花束を渡す者もいる。
「オスカー様、おめでとうございます」
「ああ、ありがとう。美しいレディたちに祝ってもらえるなんて嬉しいぜ」
 
 如才なく女性たちの相手をしながら、オスカーは会場の中を見渡した。
 吹き抜けになっている大きなホールが、メインの会場になっているらしい。生花の美しい飾り付けが壁やテーブルのあちこちに置いてあり、バイキング形式のテーブルには彩りの美しい料理が並んでいる。オスカーの好きな酒もふんだんに用意してあるようだった。

「おい、オリヴィエ、こんなに料理を用意してどうするんだ?」
「どうって、みんなでおいしくいただくんだよ。ほらっ、第二弾行くよ!」
「なにっ」
 オリヴィエの声と共に、またも爆竹とクラッカーの音が響き、開いたドアから一斉に、守護聖や教官たちが現れた。
「オスカー様、お誕生日おめでとうございます〜!これカティス様のワインです」
「俺の贈り物受けとってください!ビッグ○ック10個の引換券です!」
「おっさんの誕生日祝うなんてちゃんちゃらおかしいけどよ、やるぜ。肩叩き機」
「今日は特別に、あなたに詩を捧げるよ」
「この鉄アレイ、使いやすいんですよ。オスカー様にぜひ」
「これはハーブオイルなのです。受け取っていただけますか」
「…フッ…おまえに贈り物をすることになろうとはな……安眠枕をやろう…」
「あ〜、これはですね〜珍しい石でできたプレートです。焼肉に使うとおいしいんですよ〜」
「僕からも贈り物をさせてください。マユラル鳥の羽根ペンなんです」
「プレゼントちゅーても何が欲しいかようわからんときは商品券!これに限るっ!」
「私からはこの本を贈らせていただきます。題して『宇宙の人種辞典』これで星系ごとの女性の差異がチェックできます」
「メルね〜、首輪を作ってみたの。オスカー様にすっごく似合うと思うんだけど〜ダメかな…」

「お、おまえら…」
 一気に騒がしくなった会場で仲間らに取り囲まれ、オスカーは両手一杯の贈り物を手に、ただ呆然としている。
 静かに進み出たジュリアスが、微笑みながら声をかけた。
「オスカー、黙っていて悪かった。今宵はどうか思う存分楽しんで欲しい」
「ジュリアスさま…」
「さあ、今日は無礼講だよ!みんな思う存分食べて飲んで、オスカーが産まれた日を祝おうじゃないか!」
 オリヴィエの掛け声のもと、怒涛の宴会が始まった。
 そして出席者たちは大いに食べ、大いに飲み、大いに楽しんだ。